「す・すみません、未來さん!」


私は慌てた。未來さんに見下げられるのは絶対嫌だ。

未來さんはふるふると首を振り、微苦笑した。こそっと小さな声で言う。


「ごめんね。沙都子と葦原が付き合ってたっていうのはすごく嬉しいの。でも、今朝の件もあるからさ。当分は当事者がナーバスな気持ちにならないように、配慮してくれると嬉しいなってだけ」


当事者……、笠井さんのことだ。

私と葦原くんの付き合いをよく思わない人たちもいる。

未來さんの優しい気遣いに胸が熱くなった。
私が答える前に、葦原くんが真面目な顔で頭を下げた。


「以後気を付けます。申し訳ありませんでした」


「ううん、いいの。葦原、その代わりってわけじゃないけど、沙都子のことお願いね。私の可愛い妹分だから」


葦原くんがにっと笑った。
よくできた部下の顔に、少しだけ本性の蠱惑的な色を載せて答える。


「はい、絶対に離しません」