「付き合ってるんですか？答えてください！」


笠井さんは大声で言った。

すでに笠井さんが触れ回っていたのだろう。社内ではこのあり得ないカップリングが、朝の話題とされていた様子だ。
みんな、私の解答を興味津々で見つめている。
笠井さんが葦原くんを好きなことは多くの人が知っている。私との間にどんな闘いが見られるかと期待しているのかもしれない。

未來さんが立ち上がるのが見えた。
見兼ねて仲裁に入ろうとしてくれているのだ。

だけど、私には答えがわからない。

なんと答えれば正しいんだろう。

笠井さんに、未來さんに、同僚たちに……なんと説明したらいいんだろう。



「付き合ってますよ」


答えは私の背後から聞こえた。

私の両肩に慣れ親しんだ手が置かれた。
背中に彼の温度を感じる。


「俺と沙都子さんは少し前から付き合ってます」


葦原五弦だった。

葦原くんが私を支えるように立ち、笠井さんに答えている。