11月最後の日は月曜だった。
今日は自宅から出勤する。

葦原くんとは、金曜の夜から土曜の夕方まで過ごした。
最近、頻繁に葦原くんの部屋に泊まるので、自分のマンションはほったらかしだったりする。昨日はたまった家事に遅くまで集中してしまった。
今朝は少し寝過ごし、出社の早い私にしてはギリギリの時刻だ。

自社のある階に辿り着き、何も考えずオフィスに入る。
すでに多くの社員が到着している。
なぜか、視線がやたらあちこちから降り注いだ。

部署が区切られているとはいえ、背の低いパーテーションだ。見渡そうと思えば、フロアのほとんどが見える。


「九重さん、ちょっといいですか?」


近づいてきたのは、葦原くんのファン筆頭である笠井さんだ。

オフィスの床は厚みのあるカーペット敷き。それなのに、コツコツとヒールの音が響くのは、彼女の歩調が剣呑だからだろう。

笠井さんは私の顔を見据え、なんの余談もなく本題を口にした。


「葦原くんと付き合ってるんですか」