「お父さん、会社経営されてたんだね」
「ええ。でも、親父はこの才能の使い方が下手でした。社員や取引先に愛されるだけじゃだめ。圧倒的に惹きつけ、支配下に置くべきだった。……結果、会社は不景気の折に倒産。家族は離散。馬鹿ですよ、親父は。もっとうまく立ち回れたはずなのに」
葦原くんはお父さんを恨んでいる。
彼の言葉にはいまだ消えぬ憎しみが感じられた。
自分に似ているからこそ、失敗が許せないんだ。
「ご家族とは会ってないの?」
「母はヒステリックな人でね。あまり会いたくはないですね。妹が一緒に金沢の実家にいますから、母に似ないことだけを祈ってます。親父は茨城の郷里に帰って一昨年無くなりました。病死です」
「葦原くん、学校とか苦労したんじゃない?」
「幸い、俺は自分の才能をわかってますから。大学は奨学金で入って、すぐに仲間を作って起業して、四年でそこそこ資産を作れました。会社経営に飽きたので、友人に任せ、普通に就職したんです。IT企業をやってたんで、SEの職種なら、今更特に覚えることないですし」
葦原くんはふふっと自嘲的に笑った。
「俺はニコニコ笑いながら、誰かを踏みつけて生きていかなきゃならないんです。きっとそういう宿命でしょう。望んだままに人をたらし込んで、支配して、駄目にして、まるで教祖か殺人鬼だ。いつか、刺されて終わるのかな」
「ええ。でも、親父はこの才能の使い方が下手でした。社員や取引先に愛されるだけじゃだめ。圧倒的に惹きつけ、支配下に置くべきだった。……結果、会社は不景気の折に倒産。家族は離散。馬鹿ですよ、親父は。もっとうまく立ち回れたはずなのに」
葦原くんはお父さんを恨んでいる。
彼の言葉にはいまだ消えぬ憎しみが感じられた。
自分に似ているからこそ、失敗が許せないんだ。
「ご家族とは会ってないの?」
「母はヒステリックな人でね。あまり会いたくはないですね。妹が一緒に金沢の実家にいますから、母に似ないことだけを祈ってます。親父は茨城の郷里に帰って一昨年無くなりました。病死です」
「葦原くん、学校とか苦労したんじゃない?」
「幸い、俺は自分の才能をわかってますから。大学は奨学金で入って、すぐに仲間を作って起業して、四年でそこそこ資産を作れました。会社経営に飽きたので、友人に任せ、普通に就職したんです。IT企業をやってたんで、SEの職種なら、今更特に覚えることないですし」
葦原くんはふふっと自嘲的に笑った。
「俺はニコニコ笑いながら、誰かを踏みつけて生きていかなきゃならないんです。きっとそういう宿命でしょう。望んだままに人をたらし込んで、支配して、駄目にして、まるで教祖か殺人鬼だ。いつか、刺されて終わるのかな」