「チェックアウトまで時間があります。少し、散歩をしませんか?」


葦原くんと散歩。
彼もまた、非日常にほだされているのかもしれない。

彼の興味関心は私とのセックスくらいだと思っていたのに。


「いいよ」


私は頷いて、フォークでベーコンを拾い上げた。



ホテルから出ると皇居が間近だった。
和田倉噴水公園を横目に、皇居外苑を散策する。

チェックアウトの時間を考えたら、そんなに遠くまでは行けないから、ちょっと歩いてみるくらいの散策だけど。


葦原くんは私と並んで歩くことをどう思っているのだろう。
今も歩調を合わせてくれているけれど。


「無事に終わりましたね。鎌田部長の結婚式」


そう。
彼女の結婚式が終わった今、彼自身も言っていた通り、この関係は容易に解体できる。
私の痴態を彼が握っていることは、嫌ではあるけれど、大きな問題ではない。
未來さんの幸せを守れるなら、他はなんでもいい。

だけど、今では私の方がこの関係を止め難く思っている。