「みんな驚いてましたよ。九重さんが感情的になったの、初だって」


ブーケの件を蒸し返されて、私はうつむく。


「やめて。恥ずかしいから」


「なんで?みんなあなたに人間らしいところがあったって感動してました」


なによ、それ。

もともと感情表現やコミュニケーションは苦手な方だけど、人をロボットみたいに思っていた人間が多数だとは。


「でも、俺知ってます。あなたが泣いていたのは、鎌田部長が人のものになるのを目の当たりにしたからでしょう」


葦原くんの嫌味な微笑みに、反論する気もない。私の恋心はばれているんだから。


「うん、そうみたい」


「あんな風にサプライズでブーケをもらうなんてね」


「ホント、幸せで、嬉しくて、……ボコボコに殴られてるような気分だった」


言いながら涙がこぼれた。
もらったブーケはクロークに預けてあるけれど、もう一度あの花々を見るのが苦痛なほどだ。