何度も涙をのみ込んだ。
本当は離席して、思いっきり泣きたかった。だけど、この日のために盛りに盛ったパールピンクドレスの佐賀さんが横で目を光らせているのでできない。

未來さんと何か企んでいた様子の佐賀さん。もしかすると、私を余興にでも巻き込もうとしているのかもしれない。

何も聞いていないけれど、未來さんのことだ。
逆サプライズもやりかねない。
新婦なのに、あの人……。

そんなところも愛しいだなんて、言えもしないことを胸のうちでつぶやく。

そうこうしているうちにお式は進む。未來さんはブルーのドレスにお色直しを済ませ、艶やかな姿でひな壇にいる。


「それでは、ブーケトスのお時間です」


女子社員や、招待客の独身女性がわっと盛り上がる。しかし、それは一瞬で消えた。


「新婦未來さんがブーケを贈呈したい方がいらっしゃるそうです」


司会者の女性が笑みを含んだ声音で言い、未來さんと視線を交わす。それから、高らかに宣言した。


「未來さんのご同僚でご友人の九重沙都子さんです。九重さん、こちらへお越しいただけますか?」