【PM12:55】


早足で階段をかけおりると、5組の教室を目指す。

みんなに聞けば一発でウソだってバレるのにさ。

息を切らしながら扉を開けると、すぐに自分の席に戻る。

「あ、哲生」

哲生が音楽の教科書を手にこっちに来たので、話しかける。

「どこ行ってたんだよ。瑠衣が心配してたぞ」

ポコッと丸めた教科書で軽くたたかれたけど、そんなの気にしてられない。

「あのね。梨花がね」

「……は?」

「だから、梨花だよ。吉沢梨花っ」