ついさっきまで一緒にいたクラスメイトのことを忘れるなんて、あまりにもおかしい。

「今は冗談を言ってる場合じゃないの! ねぇ、ちゃんと聞いてよ」

大きな声を出してしまったあたしに、山本先生は悲しそうな顔をした。

「空野、落ち着け。本当に知らないんだ。なぁ?」

たずねられた瑠衣も山本先生と同じような表情をしてうなずく。

「うん……。心、どうしちゃったの?」


返す言葉がなかった。


ふたりがあたしを見る目線が、まるで哀れんでいるように思えてくる。

「もういい」

それだけ言うと、あたしは音楽室を小走りで出た。