【PM12:45】


「なに言ってるんですか? 梨花のことですよ」

山本先生の言っている意味がわからないまま、あたしはそう言った。

ふざけている場合じゃないのに、山本先生はぽかんと口を開いたまま。

「空野、寝ぼけてんのか?」

「それは先生のほうじゃないですか。梨花ですってば、吉沢梨花」

「それ何組の生徒?」

「は? 5組です。うちのクラスでしょ!」

思ってもいない展開に、イライラしたあたしの口調が意識せずにキツくなった。

だけど、山本先生は気にもとめてないふうに腕を組みながら、
「吉沢梨花……そんな生徒、いないだろ?」
と、あたしの顔をのぞきこんだ。