「ふふ」

軽く笑った梨花が立ちあがると、あたしのほうへゆっくり歩いてくる。

走って逃げたいのに、足がガクガク震えていて這うことしかできない。


ドンッ


気づくと、音楽室のはしにあるグランドピアノの脚に背中がぶつかっていた。

袋小路に追いつめられた獲物をいたぶるように、梨花はゆっくりとその顔をあたしに近づけてくる。

「さっき、私が答えられなかった問題を心だけが答えたもんね。そういうのってすごく気持ちよくない?」


「……え?」