ぎょっとして視線の方に目をやると、ベートーベン、モーツァルト……その横は誰だっけ?

天井近くに飾られた肖像画に、ここが音楽室だったことを思い出す。


あたしは……あたしは、なにを……?


考えようとするけれど、頭が真っ白になっているみたい。

ようやく立ちあがってみても、足に力が入らずによろけそうになる。

なんとか体制を整えながら、そばにあったグランドピアノに左手をついて体を支えた。


視線を床に落とすと、そこには吉沢梨花があお向きに倒れていた。


びっくりしたように目を見開いた梨花の頭の下からは真っ黒な液体が広がっている。


それは、血。