「なんのこと?」

そう聞き返すのと同時に、梨花の右手がサッと振りあげられたかと思うと、

バシッ

乾いた音がしてあたしは床に倒れこんだ。

左のほほに遅れて痛みが走る。


あたし……殴られたの?


知らずにほほを手で押さえていた。

泣くつもりもないのに、ジンジンとする痛みが涙をこぼれさせた。



まっすぐにあたしを見る梨花の顔には、仮面のような笑顔がまだ貼りついている。