「……」

とっさに答えられずにあたしはなぜか梨花の手を振り払ってしまった。

「あ……」

しまった。


梨花を怒らせてはいけないのに……。


だけど気分を害した様子もなく、行き場を失った手を見ながら梨花はクスクス笑っている。

「そんな怖がることないでしょう?」

「……べつに怖がっているわけじゃ……」


ウソ。


正直怖かった。


梨花に話しかけられることはあまりなかったから。