テニス命で、勉強は二の次。

バカ笑いの声も大きいし、冬だというのにまだ真っ黒の肌で髪の寝ぐせがトレードマーク。


こんなヤツに片想いしてるなんて、自分でも信じられないけど……。


「手、洗ってくる」

瑠衣と哲生にそう言って、ハンカチを手に立ちあがると後ろの扉へ。

みんなのうれしそうな声を聞きながら、気分よく廊下にある長いステンレス製の洗面台へついたあたしは、蛇口をひねろうと手を伸ばした。

その手を白い手がつかまえた。

「心」

横を見ると、それは梨花だった。


色白の顔にほほえみを浮かべて、あたしの名前を呼ぶ。