普段は合わせない目が合う。

じっとあたしを見る山本先生が、すうっと息を吸いこんでからあたしの名前を呼んだ。

「空野、おまえに託したぞ。答えてみろ」

教室の視線が一斉にあたしを見た。

梨花だけは微動だにせず前を向いている。

「空野、聞こえてるだろ。空野 心、答えなさい」

いつものやさしさはどこへやら、なぜか詰問するような口調にあたしは立った。

「はい」

「清少納言は引退したあと、どうなったんだ?」