前の方の席の梨花は、ゆっくりと立ちあがった。

椅子を引く音が静まり返った教室に響く。

梨花の長い黒髪が少し揺れた。


「……わかりません」

「そうか。座っていいぞ」

「はい」

おだやかな声とは裏腹に、誰もが梨花の機嫌が悪くなったのを感じた。

後ろ姿でもわかるくらい、あたしたちは梨花に敏感だから。


「さっきから何回も説明してるぞ。あと3人答えられなかったら、お前ら次回はテストするからな」