とにかく、今は当てられないように気をつけなくちゃ……。

先生と目を合わせたり、うつむいていては逆に当てられやすい。

考えているフリがいちばん当てにくいことをあたしは知っている。

隣の席の瑠衣は、教科書とにらめっこしている。


「よし、それじゃあ吉沢」

山本先生の声に、一瞬教室がざわめいた。

梨花は間違うことを嫌うから。

だから、手を挙げたときだけ指すのは暗黙の了解だったはず。


それなのに、山本先生は、
「ん? わからないか?」
と、声を重ねた。