その後の調べで、犯人はサッカー部の三年生、しかも複数人だったことが明らかになった。
練習終わりに夕飯を共にしたあとのことで、未遂で済んだのは、現場である公園の近くをたまたま通りかかった近所の人が、異変に気づいたからだったという。
ここ最近桜の帰りが遅かったのは、単に練習が大変だっただけではなく、夕飯や遊びに付き合わされていたからだそうだ。
毎年希望者が殺到するマネージャーを絞るための投票で、その犯人たちは桜に票を入れていた。それを桜も知っていたからこそ、断ることができなかったのではないかと誰かが言っていた。
学校側は、この事件が明るみに出ないようにした。強豪だと名の高いサッカー部に不祥事があったことを知られたくなかったのだろう。
犯人の三年生は停学や退学といった処分を受けたが、サッカー部自体はそのまま活動を続け、その年には全国大会にも出場した。
輝かしい栄光の裏にこんな事件があったことを知っているのは、教職員と当時のサッカー部の部員と、当事者たちの周りだけ。ほとんどの生徒は、自校のサッカー部を誇らしく思っていただろう。
自分がちゃんと隣にいれば、こんな事件は起こらなかった。
たとえ面倒でも時間を合わせる努力をしていれば、桜の笑顔が失われることはなかった。
紫苑は自身を責めた。