「…………なんで?」




百合が小さく呟く。




「なんで、そんなこと言ったの?

だって、涼は、サッカー選手になるんでしょ?

塾なんか行ってたら、練習する時間、どんどんなくなっちゃうよ?」




まるで自分の心を見透かされたような言葉で、俺は目を瞠った。




「本当にいいの? それで。

塾なんかより、受験勉強なんかより、今の涼にとって大事なことがあるんじゃないの?」




胸に深く突き刺さるような言葉。



あまりの痛みに、俺は思わず俯いた。




「………だって、しょうがないよ。

親の言うことだし、さ。


そりゃ、俺だって、勉強よりもサッカーの練習してたい。


でも、父さんが言いたいことの意味も、心配してくれてる気持ちも分かったし………。


だから、しょうがないかなって。

頑張って両立してくしかないよ」