「おはよ」




駅で待っていた俺を見た瞬間、百合は驚いたように目を丸くした。




「どうしたの、涼………。

ひどい顔してる」



「いや、うん………。

昨日の夜、ちょっと、寝れなくて」




ここで、さらりと「今日のことが楽しみでさ」なんて言えたら格好もつくのに、俺はもごもごとそう言うことしかできなかった。




「寝れなかったって、どうして?」



「うん、ちょっと、親とケンカっていうか、ケンカにもならなかったけど………」



「え?」



「いろいろ言われちゃって、なんかへこんだっていうか、いろいろ考えてたら寝れなくて」




百合はじっと俺を見上げている。



俺はなんとか笑みを浮かべて、


「………とりあえず、中、入ろうか」


と言った。



百合は「あ、うん、そうだね」と答えて、鞄から財布を取り出した。