俺は必死で自分の考えを、気持ちを伝えたつもりだった。



でも、父さんと母さんの顔色はちっとも変わらない。




「好きなことだけやっていれば、それは楽しいかも知れないけどな。

そんな甘いことばっかり言っていても、現実は厳しいんだ。

やりたいことだけやっていても、生きてはいけないんだよ。

お前だって、もう中学生なんだから、それくらい分かるだろう?」




「そうよ、涼。

お父さんもお母さんもね、あなたのことが憎いから言ってるわけじゃないの。

あなたのためを思って言ってるのよ?」





ーーー『あなたのためを思って』。


ずるい言葉だ。



そんなふうに言われると………子どもは、何も言い返せない。




「…………分かったよ。

行けばいいんだろ?

でも、サッカーは絶対にやめないから」




諦めてそう言うと、母さんが嬉しそうに笑った。




「じゃあ、明日、さっそく塾に申し込んでおくわね」




俺は何も言わずに自分の部屋に戻った。