不思議な雰囲気をまとったその女の子は、加納百合、という名前だった。




 転校当日、担任の先生に案内されて教室に入ったとき。



 窓際の席に彼女の姿を見つけた瞬間、俺の心臓は、まるで誰かに掴まれたかのようにぎゅっと縮まった。



 どきどきしながら、でもそれを顔に出さないように必死に取り繕いながら、俺は自己紹介をした。



 ちらちらと彼女のほうに目を向けたけど、彼女は細い腕で頬杖をついて、ぼんやりと外を眺めていた。


 それがものすごく悲しくて、俺は柄にもなく大きな声を出し、



「念のため、もう一度言っときます。

宮原涼です!」



と言った。


 突然の大声に、みんなが目を丸くして、そして噴き出す。



 加納さんは、そのとき初めて転校生が前で喋っているのに気がついた、といった表情で前を向いた。


 そして、俺と目が合ったとたんに、こぼれ落ちそうなほどに大きく、目を見開いた。