「え……?

宿題ならやってるよ、ちゃんと」




「そりゃ、宿題はね。

でもねぇ、来年は受験生でしょ?

宿題だけやってたって、足りないんじゃないの?」




なにを言ってるんだろう、急に。


俺は訳が分からないまま、「どういうこと?」と訊き返す。



母さんは「ちょっと、座って話そうか」と言って、ダイニングテーブルの椅子に腰を下ろした。



俺も母さんの向かいに座る。




「あのね………お父さんと話したんだけどね」



「うん」



「それで、あと、涼の同級生のお母さんたちとも話したりしてて………」



「うん、なにを?」




なぜか言葉を濁す母さんを促すように言うと、母さんが観念したように話し始めた。




「ねぇ、来年は受験でしょ?

三年生になってから受験勉強はじめたって遅いから、みんな二年生の夏から始めるんだって」



「………え?」



「聞いたら、進学校を目指す子は、みんな塾に行ってて、今年の夏期講習にも通ってるって言うじゃない。

ねえ、涼も行ったほうがいいんじゃない?」