彼女は目を瞠り、ぱっと片手を上げる。


 俺はしっかりと彼女の手を捉えた。


 ひんやりと滑らかな感触の手だった。



 そう思いながら、俺ははっと我に返る。


 思わず握手なんか求めてしまったけど、知らない女の子にいきなり触れるなんて、絶対に引かれてしまうに違いない。



 ………しまった、と思ってどぎまぎしていると、彼女の目がゆったりと細くなった。


 思わぬ表情の変化に驚いて、彼女の顔を観察する。



 薄い唇が一瞬開き、そのあとぎゅっと閉じられて、かすかに歪んだように見えた。


 笑っているような、泣いているような、不思議な顔つきだった。



 一瞬のその表情が、俺の目に焼きついて離れない。



「………よろしくね」



と小さく呟いて、彼女は俺の目をじっと見つめ返してきた。


 その瞳に吸い込まれそうな感覚を覚えながら、俺はこくりと頷いた。