次に現れたのは、流れるような筆文字。



ーーー遺書だ。


家族に宛てた遺書。



出撃命令を受け、数日以内には死ぬことが決まったときに書かれた手紙。



ごくりと唾を呑んでから、俺は読み始めた。




死になくない、なんて、誰一人書いていない。


むしろ皆、まるで、死ぬことが嬉しいかのような書き方をしている。



お国のために、とか、

天皇陛下万歳、とか、

悠久の大義、とか、


俺には共感も、理解すらできない言葉たちが、迷いのないまっすぐな文字で書き連ねられているだけ。



あとは、育ててくれた親に対する感謝と、親不孝だったと詫びる言葉。


見事に敵軍に体当たりすることで親の恩に報いる、なんて信じられないことも書かれていた。




そんなわけないのに。



子どもが死んで嬉しい親なんて、

子どもが死んだことを誇りに思える親なんて、


………いるわけがないのに。




生きて欲しかったに決まってる。


俺は、誰に向ければいいかも分からない感情をもてあまし、項垂れた。