百合から受け取った本を、1ページ目から見ていく。


確かに、俺にでも理解できる、簡単な文章で書いてあった。



百合はその間に他の本を手に取り、ノートに書き写したりしている。


俺も大事そうなことをいくつかノートにまとめた。



学習コーナーには、俺たちの他には、近所の高校の制服を着た男子高生三人組と、大学生らしい女の人一人しかいない。



すごく静かだ。


ページをめくる音と、シャーペンの芯が紙に触れる音だけが聞こえる。



何気なく目を上げると、思いがけないほど近くに百合の顔があった。


長くて真っ直ぐな睫毛が伏せられて、頬にくっきりと影を落としている。



百合はすごく集中した様子でノートにペンを走らせていた。



ーーー見惚れてるヒマなんかない。


俺も頑張らなきゃ。


百合に幻滅されたくない。