ひゅ、と百合が息を呑む音がした。



それを聞いて、俺は唐突に我に返る。


さらさらとして滑らかな百合の手。

それを握りしめた掌が、今にも汗ばんできそうだ。



心臓が口から飛び出そうなくらい、どきどきしていた。



「………ご、ごめん」



掠れた声で謝ると、百合はふるふると首を横に振った。



「べつに、謝ることない」



それから、おかしそうに微笑む。



「………こんなとこで、いきなり泣いたりしないよ。

泣きそうに見えた?」



「うん………ちょっと」



「大丈夫。ありがと」



百合はにこりと笑って、開いた本のページを俺のほうに見せる。



「この本ね、特攻隊が始まるまでの経緯とか、すごく分かりやすく書いてあった。

これまとめるといいかも」



その言葉を聞いて、俺たちは特攻隊について調べて発表するために図書館に来ていたのだ、と思い出した。