俺は植木の隙間から、何ということなしにぼんやりと校舎を眺める。


 けっこうきれいな学校だ。

 グラウンドも広い。


 野球部とサッカー部が、悠々と練習している。

 前の中学のグラウンドは狭くて、野球部とサッカー部が同時に練習すると、よくぶつかったりしていたのだ。


 ここはのびのび練習できそうだな、と思って、俺は嬉しくなった。



 しばらく眺めていると、ふいに、小さな足音が聞こえてきた。

 ざり、ざり、と音を立てて、俺の後ろを通り過ぎていく。


 俺は反射的に目を向けた。


 そこには、まばゆい夏の光に照らし出された一人の女の子が立っていた。



 視線が静かに絡まり合う。

 時の流れが、止まったような気がした。



「…………あ」



 薄く開かれた彼女の唇から、かすかな声が洩れた。


 彼女はなぜか、驚いたように目を見開き、俺の顔をじっと見つめている。



その澄んだ瞳に囚われたように、俺は目が離せなかった。