「空襲がどんどんひどくなっていった。

毎日のようにアメリカの爆撃機が飛んで来て、都市部が次々に攻撃されて、数え切れないほどの命が奪われていく。

国民も少しずつ危機感を覚えはじめた。


………軍部は何とか戦況を挽回しようとして、焦ってた。

でも、アメリカは圧倒的に物資が豊かで、日本はもう資金もなくて、武器も戦闘機も満足には作れない。

正攻法では勝てそうにない。


だから………特攻作戦が考えられた」




百合は、まるで体験してきたかのように語る。


苦痛に歪んだ顔に、俺まで息苦しくなってきた。


空襲の映像………テレビで放送されたのを何度も見たことがある。

街も人も焼かれて、たくさんの生活があったはずの場所が、ただの焼け野原に変わっていったのだ。




「特攻隊は、片道だけの燃料と、爆弾だけを積んで、次々に飛び立っていった。


体当たりすることで的中率が上がるって、軍部は考えてた。

実際にはほとんどが失敗したって言われてるけど………。


でも、日本には、それ以外に勝つ道はないって思い込んでた」