「太平洋戦争………第二次世界大戦ってね、日本は初め、連勝してたんだって。

ロシアみたいな大国に勝ったり、アメリカ軍を壊滅させたり……。

だから、国民はみんな、日本の強さと勝利を確信してたの」




そうなんだ。知らなかった。

日本は惨めな敗戦国って思ってたから。




「でも、勝てたのは、他の国が日本を甘く見てた最初の頃だけで………だんだん日本は敗けが続くようになって、戦況は悪くなる一方だった。

それでも新聞やラジオでは、まるで日本が勝ち続けてるように報じてた。


だから国民は、日本の勝利を信じて、貧しくて飢えに苦しむ悲惨な生活にも耐えてた。

自分たちの食べ物を削ってでも、戦ってくれてる軍人たちを応援して」




百合はふと窓の外に目を向け、眩しそうに目を細める。


その視線の先では、幼稚園くらいの子供たちが公園の水場で無邪気に遊んでいた。


なんてのどかなんだろう、と俺は思う。


平和だ、と実感した。