「この本と、こっちと………あ、その本もけっこういいよ」



特攻隊に関連する本を探していると、百合がやけに詳しいのに気がついた。



「百合、詳しいね。調べたことあるの?」



俺がそう訊ねると、百合がこくりと頷いた。



「資料館行ったあと、もっと色々知りたいなって思って………」



「へえ、すごいな」



それしか言えない。


中学生で、自分から戦争について調べようと思うなんて。


百合って、本当に、ふつうの子とは全然ちがう。




「俺さ、特攻隊ってよく知らないんだ。

よかったら、基本的なことだけでも教えてくれない?」



十冊ほどの本を持って学習コーナーに行き、隅っこの大きな机を陣取ったところで、俺は百合にそう言った。



百合は「うん」と頷き、一冊の本をゆっくりと開きながら、静かに語り出した。