「じゃあ………あたしも、下の名前で呼んでいい?」




加納さんーーー百合がそう言った。


俺はこくりと頷く。


顔が紅くなっていないか心配だ。




「じゃ、涼……くん」




その言葉に、俺は噴き出してしまう。




「いや、そこは『涼』だろ。

この流れからして」




百合も「だよね」とくすくす笑う。



なんだろう………この感じ。


幸せ?

そんな使い慣れない言葉を使いたくなってしまう。



やばい、この顔、サッカー部のやつらには絶対見られたくない。


きっと、きもいくらいにやにやしてるから………。




「………えーと、行こっか」



「あっ、うん。早く調べなきゃね」




俺たちは何となくぎこちない感じで、館内案内図を確認して、歴史関係の本が並べられている書架へと向かった。