加納さんに練習風景を見られていたのだと知り、俺は急に居たたまれなくなった。


今日はあんまり調子が良くないのだ。




「宮原くんて、サッカー上手いんだね」




並んで水場から離れる途中で、加納さんがいきなりそう呟いた。


びっくりして見下ろすと、加納さんのきれいな瞳がまっすぐに俺を見ている。




「あたし、あんまりサッカーは詳しくないんだけど、見てたら何となく分かったよ。

前の中学でもやってたの?」




加納さんは、こんなに暑いのにほとんど汗もかいていなくて、やけに涼しげだ。


それにひきかえ、俺はだらだらと汗を流していて、恥ずかしい気がした。



それにしても、こんなに長い会話をしたのは初めてだ。


嬉しいけど、むちゃくちゃ緊張する。


しかも、上手いなんて言ってもらえるとか………やばい。



俺はにやにやしてしまいそうな口許を必死に引き締めて、なるべく平然と答える。




「あー、うん、やってたよ」



「そうなんだ。じゃ、中学から? それにしてはすごく上手だよね」



「いや、小1のときからクラブチームでやってて、前の中学では部活とクラブ両方いってた」



「へえ、すごい。がんばってるんだね」