すべての処理が終わってみんなが席に戻ったとき、浅井が教室に入ってきた。



横目で観察していると、浅井は何も気づかない様子で普通に席についた。



それでいい、と思う。


何も知らなくてもいいんだ。



あんなにひどい扱いを受けたことなんて、知らないほうがいい。



でも、もし、また同じような目に遭うことがあったらーーーそのときは、きっと今日みたいに、みんなが味方をしてくれるはずだ。


俺だってそうだし、今までは見て見ぬ振りをしていたクラスメイトたちもそうだ。


これからは、陰湿な嫌がらせを見過ごすやつなんて、きっといないはずだ。



それはーーー加納さんのおかげだ。


加納さんの言葉が、みんなの目を覚ましたんだ。



曇りのないあの言葉が。




俺は、席についた加納さんのほうに目を向けた。



いつものように、きれいな横顔で、窓の外に視線を向けている。



その目は、まっすぐに空を見据えている。



なんて強くて、優しくて、純粋で、きれいな瞳だろう。



俺は加納さんから目が離せなかった。