三島はぴくりと頬を震わせ、それでも虚勢を張るように睨みをきかせた。



不穏な空気が漂う。


クラス中がぴりぴりと神経を尖らせていた。



それでも、加納さんだけは、凛と前を向いている。



加納さんは三島を睨んだまま、スカートのポケットからハンカチを出し、

浅井の机に書かれた『死』という文字をごしごしと拭った。



そして、ゆっくりと口を開く。




「………あんたたち、死ってどういうものか、分かってるの?」




静かな声だった。


でも、その声はよく通り、静まり返った教室の中に染み渡った。




「死ってものが、どれだけ重くて、大きくて、苦しくて、悲しくて………切ないものか、分かってるの?」




三島たちは黙り込んで答えない。




「………なんにも分かってないくせに」




加納さんの声が、ふいに歪んだ。


今にも泣き出しそうにーーー。




「なんにも知らないくせに……っ。

………死なんて言葉、軽々しく使うな!!」




叫びのような言葉が響いた。


みんな、息を呑まれたように黙って加納さんを見つめている。



三島たちも、引きつった表情のまま、何も言わなかった。