しぃん、と静まり返る教室。


割れた花瓶の破片と、飛び散った雑草。



加納さんは視線を落としたまま動かない。



我に返った俺は、足を踏み出して、加納さんの背後に立った。




「…………加納さん。大丈夫……?」




囁くように声をかけると、加納さんが花瓶の破片からゆっくりと目を上げる。



その大きな瞳には、うっすらと涙が滲んでいた。



きつく寄せられた眉根。


ひどく悔しそうに唇を噛んでいる。



加納さんは一瞬俺を見て、それから視線を巡らせた。




「………誰なの? これ、やったの。

あんたたち?」




加納さんは三島たちを見て低く言った。



三島たちは、すこしぎこちないにやにや笑いを浮かべている。




「………だったら、何だよ?

なんか文句あんのか?」




三島が挑戦的な口調で加納さんに言った。



加納さんは怯む様子もなく、ぎっと三島を睨みつける。




「………下らないことすんなよ。

いじめとか、最低!」




加納さんはきっぱりと言った。