二週間も経っていないはずなのに、みんなどこに行ったかも覚えていないようだ。
まあ、中学生にとっての社会科見学なんて、そんなものか。
みんな、友達と一緒にバスで出かけたり、バスの中でお菓子を食べたり、ピクニックのようにして弁当を食べたりする楽しみのほうがメインで、
どこに行って何を見たかなんて、正直、どうでもいいことなのだ。
女子たちも顔を見合わせて、「なんてとこだったっけ?」なんて言い合っている。
そんな中で、ひとり静かな視線でみんなを見つめていた加納さんが、ふいに口を開いた。
「ーーー特攻資料館」
静かな声。
まるで、加納さんだけ違う空間にいるみたいだ。
「特攻隊として体当たりして亡くなった人たちの、遺書とか、遺品とかが展示されてる、資料館」
加納さんは、誰を見るともなく、焦点の合わないような目つきで、そう言った。
俺の質問に答えてくれたというのに、なぜか俺のほうさえ見てくれない。
そのことが気になって、加納さんをじっと見つめていたからだろうか。
ーーー俺は気づいてしまった。
加納さんの目に、うっすらと涙が滲んでいることに。
まあ、中学生にとっての社会科見学なんて、そんなものか。
みんな、友達と一緒にバスで出かけたり、バスの中でお菓子を食べたり、ピクニックのようにして弁当を食べたりする楽しみのほうがメインで、
どこに行って何を見たかなんて、正直、どうでもいいことなのだ。
女子たちも顔を見合わせて、「なんてとこだったっけ?」なんて言い合っている。
そんな中で、ひとり静かな視線でみんなを見つめていた加納さんが、ふいに口を開いた。
「ーーー特攻資料館」
静かな声。
まるで、加納さんだけ違う空間にいるみたいだ。
「特攻隊として体当たりして亡くなった人たちの、遺書とか、遺品とかが展示されてる、資料館」
加納さんは、誰を見るともなく、焦点の合わないような目つきで、そう言った。
俺の質問に答えてくれたというのに、なぜか俺のほうさえ見てくれない。
そのことが気になって、加納さんをじっと見つめていたからだろうか。
ーーー俺は気づいてしまった。
加納さんの目に、うっすらと涙が滲んでいることに。