俺は重い足どりで、きゃっきゃと騒いでいる小川さんたちの班に近づいた。



あと数歩で声が届きそうなところまで来た、その時。




「真穂ー、俺らと組もうぜ」




俺よりも先に声をかけた男子がいた。



俺は、不自然にならないように気をつけつつ足を緩め、様子を見守る。



真穂、と親しげに呼んで小川さんの肩に手を置いたのは、バスケ部の酒井だった。


おしゃれで明るくて、クラスの男子の中心にいるグループのリーダー格だ。




小川さんはにっこり笑って顔を上げ、「うん、組もう組もう」と応えた。



小川さんの返事に同調するように、他の女の子たちも頷いている。



俺は歩く方向を微妙に変え、さも元からそちらに行くつもりだったかのような足どりで、前を向いたまま小川さんたちの班の横を通り過ぎた。



だって、気まずいじゃないか。