そのとき、加納さんが、ふい、と目を逸らした。


そのまま、教室の前のほうに置いてある花瓶のあたりを眺めている。



視線が外れてしまったことが、ものすごく残念だった。




「………でいいいよな? 宮原」



「………えっ? はい?」




突然、先生に話しかけられて、俺はびっくりして視線を戻した。


先生が怒ったような顔をする。




「なんだお前、話きいてなかったのか?

転校生のくせに緊張感ないな!」



「………すみません」




再び笑いが起こった。



俺は少し顔が熱くなるのを感じながら、




「すみません、もう一回言ってください」




と先生に訊き返した。