「加納さんってさ、どんな子?」



 ある日俺は、何気ないふうを装って、サッカー部仲間の佑輔と聡太に訊いてみた。


 二人は顔を見合わせて、すこし戸惑ったような表情になる。



「どんな子って………なんか、ちょっと変わってるよな」


「うん、ちょっとっつうか、かなり?」


「俺、しゃべったことない」


「俺も。てか、男子は誰も話したことないんじゃね?」


「ああ、たぶんな」



 俺は、「ふうん」と頷きながら、やっぱり窓の外で揺れる梢を眺めている加納さんを、ちらりと盗み見た。



 きれいな横顔だな、と思う。


 額から鼻にかけてのラインが、流れるように滑らかだ。


 薄い唇は、いつも少しだけ尖って、上を向いている。


 世界に対して、なにか納得できずにいるように。



 加納さんは一体、いつも、どんなことを考えているんだろう?



 彼女の纏う独特の澄んだ空気は、ほかのクラスメイトたちとは全く異なるものだ。


 きっと、俺には想像もつかないようなことを考えているような気がする。