「………さっきね、嬉しかったよ」




百合がふいにそう言った。



なんのことか分からなくて、俺は眉を上げる。




すると、百合の頬がほんのりと赤くなっているのが分かった。




「………さっき、電車の中で」




「うん………」




「あたしのこと、好きって、言ってくれたんだよね」




百合は遠回しな言い方なんかしない。



駆け引きなんかしない。



いつだってまっすぐだ。




そういうところが、俺は。





「…………うん、好き。


むちゃくちゃ好き」





俺は強い口調で言った。



彰さんの心に添うように。


でも、彰さんの影を追い払うように。




俺は、彰さんそのものではないから。


だから、百合には、俺自身を見てほしかった。