「出撃の日………あたしは飛行場まで見送りに行った。


彰は古びた戦闘機に乗って、飛び立って………空の彼方に消えていった」




百合の瞳が海の上の空を見つめる。



そうか、と俺は思った。



百合が見ていたのは、その人ーーー彰さんだったんだ。


彰さんが消えた空だったんだ。




俺もその空に目を向ける。



自分の命を犠牲にして、国を、人々を救おうとした人たちが消えていった空を。




「………ね、涼。

初めて会ったときのこと、覚えてる?」




唐突に百合が言った。



俺はびっくりして百合を見る。




「覚えてるよ、もちろん。

なんか、不思議な女の子だなって、すごく印象的だったから」




百合は「え? あたしが?」と首を傾げた。