ずきん、と胸が痛くなった。



百合には好きな人がいたんだ。


しかも、20歳の人ーーー大人だ。



俺は少なからずショックを受けていたけど、必死で百合の話に意識を戻した。




「………でもね。

彰のことが好きだって気づいたときには、もう、何もかも手遅れだった。


彰たちの隊の出撃が決まってーーーあたしは必死で止めたけど、なにも伝わらなかった。


特攻隊員の人たちはね、自分が特攻することで日本を救うんだって、悲しいくらい切実に考えてたの。


彰も同じだった。

自分の大切な人たちを護るために行くんだって言って………本当に行ってしまった」




その時のことを思い出したのか、百合の目がじわりと潤んだ。



俺は何て言ったらいいか分からなくて、ただ見つめることしかできない。