「あたしね………戦時中の日本に行ったことあるんだ」




意味がよく分からなくて、俺は眉を上げて百合を見る。



百合はくすりと笑い、「たぶん、タイムスリップってやつ」と言った。




「え? タイムスリップ……?」



「うん。ある日突然、目が覚めたら、1945年の日本にいたの」




百合は何かを思い出すように、遠くに目を向けた。




「………ひどい世界だった。


食べ物がなくて、飢え死にしていく子どもがたくさんいた。

戦争に召集されて、そのまま帰ってこない人もたくさんいた」




百合の声が苦しげに歪む。





「空襲にも遭った………。

あたしの目の前で、何人もの人が、炎に焼かれて、苦しみながら死んでいった」