しばらく行くと、ぱっと視界が開けて、海が見えてくる。



百合が「あ」と小さく声を上げた。




「海………」




潮風に百合の髪がなびく。



唐突に、あぁ、幸せだな、と思った。




「走ろうか」




俺がそう言うと、百合も頷いた。




「じゃあ、べただけど………競走!」



「えっ、それはずるいよ、無理!」



「よーい、どん!」




俺が駆け出すと、百合も慌てた様子で走り始めた。




「百合、けっこう速いじゃん!」



「でもサッカー部に勝てるわけないし!」



「いや、勝たれても困るし!」




俺は本気を出して坂を駆け下りた。



百合はしばらくついてきていたけど、途中で息を切らして、「もう無理!」とスピードを緩めた。




俺は足を止めて、百合が追いつくのを待つ。



それから、並んで歩いて砂浜に降りた。