「朔乃、好きになっちゃったんでしょ?」


「あたしが誰を」


主語がなくたってわかる。
でも、あえて聞き返した。


星奈は「もうー」と頬を膨らませて、もう一度問いかけてきた。


「有明くん。好きなんでしょ?」


思わずため息が出た。


何でわかっちゃうんだろう。あたしは陽ほど顔に出てるわけじゃないと思うのに。


長年一緒に過ごしてきた親友だからか、単に星奈が鋭くて敏感なだけなのか。


あたしは取り繕うこともせず、黙って頷いた。


「……つらい初恋になっちゃったね」


「ほんとだよ。初めてちゃんと好きだって思った相手なのに、失恋するのが見えてるんだから」


あたしの中では恋愛対象外だと、最初からきちんと外しておいたはずなのに。
陽の分際で、無理やり入り込んでくるなんて。


「でも、私は嬉しい。朔乃がやっと、誰かを本気で好きになれる日が来たんだもん」


つらい恋だったとしても、きっと素敵な経験になるよ。


そんなことをつぶやいた星奈。


「有明くんを見る朔乃の目、すごく優しくて穏やかで綺麗だったよ。だから、恋してるんだなってすぐにわかっちゃった」