陽が好きだと自覚してからも、あたしは変わらず陽の恋愛の先生をやっている。


陽のことを応援するのは平気なわけではないけど、天川さんと上手くいくことが陽が今一番望むことだとわかっているから、仕方ない。


それに、あたしが陽にひとつ教えると、その度に尊敬と感謝のこもったあのキラキラとした目をあたしに向けて、微笑んでくれる。


あたしは、それが嬉しかった。


この“放課後恋愛授業”は、あたしにとって大切な時間だった。


報われなくてもいい。
今まで散々不真面目な恋愛の仕方をした代償だと思っているから……。





「今日こそ、連絡先をゲットしてもらうわよ」


放課後、いつものように恋愛授業の時間を迎えた。


あたしは、陽の机にバンッと手を置いて言う。


「今時ね、連絡のひとつも取り合わないで仲良くなるなんて、はっきり言って難しいのよ」


「うっ……そ、そうですよね……」


陽が身を小さくしながらあたしの言葉に頷くけど、本当に理解しているのだろうか。


と言うのも、あたしは約2週間前から「そろそろ連絡先を交換しなさい」と宿題を出しているのだけど、その宿題がいまだに終わっていないのである。