「大丈夫。あたしが協力するから。その為の“先生”でしょ?」


微笑みながら言うあたしを見て、陽は安心したのか、同じように目尻を下げて笑う。


「はい!ありがとうございます!」


弱々しかった顔が、急に無邪気な笑顔に変わったものだから、あたしは一瞬ドキッとしてしまった。


でも、すぐに冷静になる。


あたしは違う。陽をそんなふうには見てない。見るつもりもない。


だって、好きになったところで絶対に叶わない恋だってわかってるから。


わかってるうえで、もし仮に好きになったりしたら、それはただの馬鹿だ。


首を横に振るあたし。
それを不思議そうに陽が見ていたので、あたしは「なんでもないよ」と、慌てて言った。


さてと、いつ頃連絡先を聞こうかとかどうやって聞き出そうかとか、いろいろ考えなきゃいけないことはあるけれども。


その前に……。


「ごめん!ちょっとトイレ行ってくるー」


男子の前だというのに、“お手洗い”と丁寧な言い方をしないところが、あたしの女子力のなさに悲しくなった。
たぶん、天川さんならちゃんとしてるんだろうなぁ。


なんて、思いながら廊下に出る。


すると、思いもよらない相手と出くわしてしまった。