理由は簡単。


あたしは、“自分の寂しさを埋める為だけに男の人と付き合っている”から。


名取くんは、まだ目をぱちくりさせている。


「本当にごめんなさい。でも、名取くんにはあたしなんかより素敵な女の子が絶対いると思う」


あたしなんかのことを好きになってくれてありがとう。


でも、名取くんは、本気で名取くんのことを好きで、本気で付き合ってくれる人と付き合うべきだ。


それは、あたしじゃない。


もう一度頭を深く下げて、呆然と立ち尽くす名取くんを置いてその場をあとにした。


教室に戻ると、星奈がニヤニヤしながら席についたあたしのもとにやってくる。


「いやー、モテる女は大変ですなぁ」


「別にモテてないから」


茶髪のロングヘアが目立つから、男子の目に無駄によく止まるだけだ。


軽くあしらうあたし。星奈はあたしのそんな様子を見て、またもやエスパー並の直感を働かせた。


「“本気のほう”だったんだ?」


「え?」


「でっかいため息ついてるし、つらそうな顔してたから」


……本当に何でもわかっちゃうんだな、あたしのこと。


「気にすんな、朔乃。私は朔乃のそういうとこ大好きだよ」


「ありがとう、星奈……」


星奈というわかってくれる人がいて本当によかった、と心から感謝した。